診療・各部門
心室性不整脈
中村玲奈 医師
右室・左室など心室から起こる不整脈には、「心室性期外収縮」、「心室頻拍」、「心室細動」などがあり、無症状なものから命に関わる致死的なものまで様々です。
心室性期外収縮
通常の規則正しい脈とは異なり、タイミングで心室から異常な電気発火が生じることにより脈が乱れる不整脈で、脈の欠滞や急にドクンと大きな脈を感じたり、一瞬息が吸いづらいなど様々な症状を呈します。症状は個人差が大きく、健康診断で初めて不整脈を指摘されることも少なくありません。
日常生活に支障がなければ治療しないことがほとんどですが、症状が強い、頻度が多い、連発している、などでは、生活改善や心機能への影響を検討し、治療をお勧めします。
治療は薬物治療とカテーテルアブレーションといって不整脈起源をカテーテルで根治する方法があります。現在カテーテルシステムが飛躍的に改良されてきており、また薬物治療ではある程度長期に投与が必要となる可能性が高いことなどから、後者を選択する施設が多くなっています。起源となる部位によっては、治療が容易ではなかったり、複数のカテーテルを組み合わせて治療にあたったりと、個々人によって至適な治療方法は様々ですので、お気軽にご相談ください。
心室頻拍/心室細動
心室性期外収縮と同様に心室からの異常な電気発火により起こる不整脈ですが、異なる点は連発することで非常に脈が速い頻脈を来し、血圧の低下や心不全を来すなど時として命に関わる危険な状態に至りうる不整脈です。同じ心拍数値の頻脈であっても、心房性(上室性)では血圧は保持されていることが多いのに対し、心室性ですと心臓の収縮力も低下するため危険度が全く異なります。
心電図の波形によって「心室頻拍」「心室細動」と分けていますが、心室細動はより致死的で、心臓の機能は破綻しており早急にAED(自動対外式除細動器)などで電気ショックをかけることが必要となります。心室頻拍は血圧が維持されているものからショック状態や心室細動へ移行する一歩手前のものまでありますが、たとえ意識や血圧が維持できていたとしても、長く続くと徐々に血圧が低下、心室細動へ移行することがあることから、どちらも治療が必要となります。
元々背景に心疾患を有していらっしゃる方がほとんどですが、既往のない特発性と呼ばれる心室頻拍・心室細動もあり、原因不明の突然死の一部を占めていると考えられています。
治療については、薬物とカテーテル治療のハイブリッドで行うことが主流です。それは、どちらも完全には不整脈を完治させることは困難な上に、再発すると致死的になりうることから、既存の治療の全て包括し個々にどのような治療が適しているか、入念な検討が必要です。また、治療が奏功し不整脈が抑制されたとしても、将来再発する可能性はゼロではないことから、埋込型除細動器を挿入し、自動的に不整脈を感知・鑑別・治療(頻拍ペーシング、電気的除細動)を行う「予防」も重要となってきます。
このように命の危険と隣り合わせな心室頻拍・心室細動は豊富な知識や経験、チーム医療など必要とされることは多岐に渡り、当院においても、最重点を置いて治療にあたっております。ご質問、ご相談などいつでもご相談ください。
なお、当院では心室性不整脈の治療成功率をより高めるために、バイポーラーアブレーションやケミカルアブレーションも行っております。詳しくは不整脈担当医師までご相談ください。
更新日:2023/12/07