発作性上室性頻拍

診療・各部門

発作性上室性頻拍

佐藤弘典 医師

・発作性上室性頻拍はいくつかの種類がありますが、いずれも心拍数が急に増えるタイプの不整脈の発作です。普段の生活では心拍数は70回/分程度ですが、この発作では突然に心拍数が150回/分ほどになります。心拍数200回/分以上になる患者さんもいます。
・もともとの心臓の持病がなければ、この発作が出現しても急に心臓が止まるような大きな問題につながることはありませんが、強い動悸や呼吸苦を伴うことがあり、病院に救急搬送されることもあります。

(検査)

発作性上室性頻拍であるかどうかは、心電図検査によって診断します。
・来院された時点で心拍数が多い場合は心電図検査を行い、発作性上室性頻拍の波形であるかどうか確認します。
・発作が消失した後で来院された場合は、動悸症状が発作性上室性頻拍であったかどうかを問診や心電図検査などで推測しますが、発作時の心電図記録がないと診断を確定することはできません。
・確定のためには、24時間心電図(ホルター心電図)や、1週間心電図を当院で行うことができます。
・最近ではスマートウォッチ(アップルウォッチ)をご自身で購入・着用され、動悸発作時の心電図記録から発作性上室性頻拍の診断に至るケースもあります。

発作性上室性頻拍の種類について

発作性上室性頻拍は大きく分けて以下の3つに分類されます。

(1)房室リエントリー性頻拍(WPW症候群)

心臓には電気刺激を通す伝導路(刺激伝導系)が張りめぐらされています。この正常な伝導路以外に余分な伝導路(副伝導路)を生まれつき持っている方が1000人に1人の割合で存在します。副伝導路が心電図ですぐにわかる例を「顕在性WPW症候群」と言い、カテーテル検査をしてはじめてわかる例は「潜在性WPW症候群」と言います。WPW症候群の患者さんは、正常な伝導路と余分な伝導路(副伝導路)との間に回路ができてしまい、その間を電気刺激がぐるぐると回り、発作性上室性頻拍を起こすことがあります。

(2)房室結節リエントリー性頻拍

心房と心室の間をつないでいる中継地点のことを房室結節と言います。この房室結節には電気の通るスピードが速い伝導路(速伝導路)を経由して電気刺激が伝わっていきますが、まれに速伝導路以外に遅い伝導路(遅伝導路)が存在し、速伝道路と遅伝導路との間に回路が形成されてしまいます。この回路を電気刺激が回り始めるとやはり上室性頻拍の発作になります。

(3)心房頻拍

 正常な心臓の動きでは、右心房にある洞結節という所から規則正しく電気刺激が発生しています。しかし、心房内の別の場所から電気が異常発生したり、心房の中に電気刺激がぐるぐると回る回路ができたりすると、心房頻拍という上室性頻拍が起こります。心房頻拍の場合、脈拍は毎分100拍から250拍であっても、心房は毎分300拍もの頻度で動いていることもあります。

発作性上室性頻拍の治療について

〈発作時〉

・点滴薬もしくは内服薬を使用します。経過観察のみでもいずれは自然停止します。
・なお、点滴薬や内服薬の効能は一時的なものであり、根本的な治療(次回以降の発作が出現しない効果)ではありません。

〈根治治療〉

・発作性上室性頻拍はカテーテルアブレーションで根治が可能です。カテーテルアブレーション治療は2泊3日程度の入院が必要です。
・カテーテルアブレーションは、不整脈検査・治療用の細いカテーテルを足の付け根などから体内に挿入して心臓の内部まで到達させます。検査中に不整脈発作を誘発し、上の写真のように3次元マッピングを用いて不整脈発作の原因となっている心臓の場所を確定させます。不整脈発作は全身麻酔で寝てしまうと出現しにくくなるため、基本的には局所麻酔のみで覚醒した状態で検査・治療を行いますが、希望によっては全身麻酔下で行うことも可能です。術時間は2-3時間です。
・発作の原因となっている心臓の部位はカテーテル先端からの熱によって小さなやけどを生じます。ちいさなやけどを負った心筋細胞は変性して電気が流れる働きを失います。そのことによって不整脈発作が出現しなくなります。
・当院では不整脈発作の原因箇所が心臓の正常な働きを維持する箇所に近い場合では、より安全な冷凍カテーテルを用いて治療を行います。冷凍カテーテルでは正常箇所に悪影響を及ぼさないことをきちんと把握できたうえで不整脈原因箇所の治療を行うことができます。

更新日:2023/12/07