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パルスフィールドアブレーション (Pulsed Field Ablation: PFA)
鈴木 篤 医師
2025年2月より当院ではパルスフィールドアブレーション(Pulsed Field Ablation: PFA)というまったく新しい治療ができるようになりました。これまでの治療が不整脈発生部位を熱したり冷却したりすることで組織を壊死させ不整脈を治療していたのに対し、パルスフィールドアブレーション(PFA)は、熱を発生させるのではなく、不整脈発生部位に短時間の電圧パルス(1500-2000V)をかけることにより心房筋細胞に小さな穴を無数に開け、細胞をアポトーシス(自然死)に導くことにより、不整脈の伝導を阻止する新しい概念のアブレーション法です。パルスフィールドアブレーション(PFA)は治療部位にやけどや凍傷が起こらないため、炎症が殆ど起こらず、治療した組織がこれまでと比べきれいに保たれます。また、このパルスは心筋細胞にしか効かないため、従来の治療のように、心臓に近い食道や神経に障害を与えてしまう合併症(食道迷走神経障害、急性胃拡張、横隔神経障害など)や、治療した肺静脈が狭くなってしまう合併症(術後肺静脈狭窄)の心配がほとんどありません。治療ターゲットとする心筋のみを選択的にアブレーションできることが最大の特徴と言えます。
また、パルスフィールドアブレーション(PFA)は当院が得意とするクライオバルーンアブレーションと操作方法が近いため、クライオバルーンを使用している施設に非常に有利であります。難治性の心房細動(持続性心房細動)の長期成績については、現時点では当院のクライオバルーンアブレーションの術後成績が圧倒的に良いのですが、早期の心房細動(発作性心房細動)の治療成績はPFAにおいてもかなり良いと考えられます。当院ではこの早期の心房細動症例からパルスフィールドアブレーション(PFA)を始めております。

当院のパルスフィールドアブレーション (Pulsed Field Ablation : PFA)システムは、2025年2月より導入したボストン社製パルスフィールドアブレーション:FARAPULSEと、2025年5月に導入したメドトロニック社製のパルスフィールドアブレーション:Pulse Selectの2機種になります。それぞれに特徴があり、ボストン社製のPFA : FARAPULSEは欧米で広く使われ、安全性・有効性ともに確立され、出力が高く(2000V)、治療時間も早く、圧倒的な信頼性を有します。一方で、メドトロニック社製のPFA : Pulse Selectは、カテーテルのサイズが相対的に小さく、挿入するカテーテルもやや細いので、小柄な日本人の高齢者や女性に向いている印象があります。また、出力がやや低い(1500V)ため、その分溶血が起こりにくい、腎臓への影響が極めて少ないなどの特徴があり、日本国内では比較的注目されております。当院では患者様に合わせてどちらを使用するか術前にスタッフ間で検討しています。また、持続期間が5年を超える難治性症例にはクライオバルーンアブレーションを検討するなど、患者様に応じて治療戦略を変え、なるべく1回の治療で効果が得られるように工夫しております。
更新日:2025/06/19