肺非結核性抗酸菌症

診療・各部門

【非結核性抗酸菌症とは】

 肺非結核性抗酸菌症は60歳くらいからの女性を中心に最近増え続けています。非結核性抗酸菌とは,結核菌もその一つである抗酸菌のグループのうち、結核菌は除いた残りの総称です。それらの菌の一部が人の肺に病気を引き起こすことがあり、それらを総称して肺非結核性抗酸菌症と呼びます。その原因菌の9割はMACと呼ばれる菌で,その場合病名を肺MAC(マック)症とも言います。結核菌と異なり、まわりへの伝染性はありません。

【非結核性抗酸菌症の進行は様々】

 非結核性抗酸菌症の症状は、最初は軽い咳、痰程度ですが、症状がなく健康診断で発見される方も数多くおられます。その後の経過ですが、治療無しで全く進行しない人も少なくない(10~20%の方は治療しなくても自然に治癒します)一方、一部の人では徐々に進行し、肺がだんだん荒れて行くこともあります。このように個人差が非常に大きい病気であるので、個々の患者さんがどういう経過を取るかの見極めることが医療の場では求められます。

【非結核性抗酸菌症の治療】

 治療は、9割を占めるMAC症について述べます。MAC症では、進行中,あるいは進行しそうな場合,2~3種類の薬の1年以上の服薬が標準と言われますが,実は科学的根拠に基づいたものではなく、習慣的にそう行われてきたのに過ぎません。薬剤も、負担の多い3剤ではなく2剤で十分という事がわが国の研究者から提案されています。また毎日ではなく、一日おきの服用も最近は提唱されてきています。

 当院ではすべての方に一律な治療を出す事はなく、進行する人にのみ、必要な期間だけ,薬物治療を提案します。人によっては胃腸系の副作用で服用出来ない方もおられ,その場合,治療のメリットとデメリットを秤にかけて決めます。

 突然悪化する方について,よく伺うと、そのきっかけとして、かぜ、ストレスなどによる免疫力の乱れがよく見受けられます。これらの観察も取り入れ,薬物治療は必要最小限とし、体調管理(特に栄養に気をつける,ウォーキングなど身体を動かす)も併せて重視しています。このような考え方で、僅かな治療のみで10年~20年間、CTなどで確かに病気はあるものの無事に過ごしている方も少なくありません。とはいえ,要所要所で適切な治療が必要になる事も多いので,診断がついた後,定期的な通院をお願いしています。

更新日:2024/04/30