耳鼻咽喉科

診療・各部門

当院は地域医療機関との連携を図る、紹介制を原則としております。
このため初診の場合、「かかりつけ医」など地域の医療機関からの紹介状をご持参下さい。
紹介状は必ずしも専門医からの文書でなくてもかまいません。

※紹介状持参の方は、初診、再診すべて総合医療相談センター(8番窓口)へ。

耳鼻咽喉科のご案内

1.耳鼻咽喉科の診療に関して

その名の通り耳、鼻、咽喉(のど)の疾患を対象にしています。人間の五感のうち、聴覚(きく)、嗅覚(におう)、味覚(味わう)の3つが含まれます。人と人とのコミュニケーションを担う上で重要な「声」、生きていくために不可欠な水分や食事を飲み込む「嚥下(えんげ)」についても我々耳鼻咽喉科で取り扱います。加えて、首にできる腫瘤も診療しています。
我々が診療する領域は耳、鼻、咽喉ともに穴の奥にあります。そのような場所を診察するために、内視鏡をはじめとした様々な器械を使います。

2.外来診療に関して

耳、鼻、のど、口腔の疾患の他にも首にできた腫瘤、顔の筋肉が動かなくなった顔面神経麻痺や、耳が原因のことが多いめまいなども診察、治療しています。
平日の午前に外来で一般診療を行っています。午後は予約制で診療、検査、外来手術等を行います。

3.入院、手術に関して

耳の手術症例に関しては、専門病院に紹介させて頂きます。
突発性難聴や顔面神経麻痺などについては重症度に応じて入院加療をおすすめしています。
鼻副鼻腔疾患に関しては、できる限り鼻内より最新式の高解像度の内視鏡を用いて手術を行い、術後の苦痛が少ないようにしています。慢性副鼻腔炎や鼻中隔彎曲症が主な対象です。またアレルギー性鼻炎や花粉症についてはCO2レーザー、あるいは高周波凝固装置を用いた下鼻甲介粘膜下凝固法による日帰り手術も行っています。
咽喉頭疾患に関してはアデノイド切除術、扁桃摘出術、声帯ポリープなどの喉頭微細手術などを行っています。急性扁桃炎により喉の痛みが著しい場合は、入院加療をおすすめしています。
頸部の良性腫瘍(耳下腺、顎下腺等)に対しても手術を行っています。悪性の腫瘍の場合には、東京大学医学部附属病院、東京医科大学病院、癌研究会病院等の専門医をご紹介し、適切な医療を受けることができるようにしています。
現在、小児の手術入院診療は行っておりません。

主要疾患の治療ご案内

1)突発性難聴

‘朝起きたら急に右耳が聞こえなくなっていた'‘コンサートで大きな音を聞いた後から耳がボーとした'‘急に耳が詰まった感じがする‘などの症状は難聴の症状のひとつです。
耳垢がたまってこのような難聴が生じることもありますが、心配なのは耳の穴の奥にある、音の振動を電気信号に変換して脳に伝える器官である蝸牛の障害で生じる突発性難聴の場合です。
突発性難聴は軽度であれば自然に改善する場合もありますが、1週間以上経過すると改善しづらくなることがわかっています。救急で受診する必要はありません(聴力検査ができないので診断/治療ができません)が、早めに近くの耳鼻咽喉科に行って診断を受けましょう。発症から1ヶ月以上経過すると、聴力の回復はほとんど見込めなくなってしまいます。特にめまいを伴う場合や難聴が重度の場合は回復しづらいことが知られています。
当院では難聴の程度やめまいの有無などにより、治療法を相談していきます。突発性難聴の標準的な治療法はステロイドホルモンの全身投与です。軽度の場合は内服薬による治療でも改善することが多いですが、重症の場合はやはり入院治療の方が点滴でたくさんの薬を使うことができるので望ましいです。
標準的には1週間の入院です。入院加療が困難な場合や糖尿病などで内服や点滴のステロイドを使用がしづらい場合には、ステロイド鼓室内注入療法(細い針で鼓膜の奥にステロイドを注入することで直接蝸牛に高濃度のステロイドを投与する方法)を行うことがあります。

2)慢性副鼻腔炎

「どろっとした鼻汁が出て鼻が詰まる」「においがしづらい」「目と目の間が痛む・頭が重苦しい」「変な(臭い)においがする」となどの症状は慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の代表的な症状です。
風邪をひいた際に起きた鼻内の炎症が、ある程度続いていると副鼻腔(鼻の周囲の空洞)にも炎症が起こります。そうすると鼻の中の粘膜が腫れてくるために、鼻と副鼻腔の間の通り道が狭くなり、換気が邪魔されてしまいます。このため副鼻腔の中の分泌物が中に溜まってしまうようになると副鼻腔の炎症はさらに悪化し、悪循環になります。
上記のような副鼻腔炎を疑う症状で受診された場合は、鼻の中の内視鏡による診察と、顔面のCT(ほとんどの場合当日撮影できます)により鼻・副鼻腔の状態を確認します。副鼻腔炎では多くの場合、鼻の中に多くの鼻汁が流れていたり、ポリープができていたりするのが確認できます。鼻の中はきれいでも、CTで副鼻腔に膿が溜まっている様子が見られることもあります。
副鼻腔炎と診断されれば、マクロライドと呼ばれる抗生物質を少量ずつ内服することで、鼻副鼻腔粘膜の状態が改善し副鼻腔炎が良くなることが知られています。鼻アレルギーが背景にあることもあるので、疑われる場合は血液検査も追加し、必要に応じてそちらの治療も行います。非常に治りづらく、喘息に合併することの多い「好酸球性副鼻腔炎」の方も増えており、呼吸器内科と相談しながら治療を進めています。
3ヶ月を目安として内服治療を行いますが、それでも改善が不十分な場合、あるいは何度も繰り返して副鼻腔炎になる方には手術をおすすめしています。
現在では鼻副鼻腔手術はほぼ全例、内視鏡を用いて全身麻酔下に手術を行っています。内視鏡下に副鼻腔の開口部を拡大し、病的な腫れている粘膜を切除して鼻の中の環境を改善します。鼻の周囲には眼、脳が接しており、手術で損傷すると重大な合併症となるので、事前に撮影したCTを利用して、手術中にどの部位を操作しているかを確認できるナビゲーションシステムを導入し安全な手術を心がけています。術後には以前は何枚ものガーゼを鼻の中に詰め込んで圧迫止血していましたが、抜く際に非常に痛みが強く辛い作業でした。当院ではガーゼをできる限り使用せず、吸湿性のスポンジやセルロース綿などを用いて痛みを最小限に抑える工夫をしています。標準的には6日間の入院です。

3)鼻中隔彎曲症、肥厚性鼻炎

「鼻詰まり」の症状があっても、特に診察や治療を受けずに様子を見ている方が多いと思います。鼻中隔(鼻の中央の仕切り)は完全に真っ直ぐではなく、ほとんどの方でどちらかに曲がっていますが、曲がりが強いと空気の通り道が壁のように塞がれてしまいます。片側の鼻が特に詰まる方の多くはこの鼻中隔彎曲が原因です。また、下鼻甲介(鼻の中の大きなひだ)が自然に腫れてきてしまう肥厚性鼻炎も鼻詰まりの原因になります。これらを修正するために、鼻中隔彎曲の原因になる、曲がっている奥の骨のみを取り除く鼻中隔矯正術や、下鼻甲介の中の骨を削って下鼻甲介そのものの嵩を減らす下鼻甲介切除術を行っています。やはり全身麻酔下に内視鏡を用いて行います。入院期間は標準で6日です。(以前行っていた鼻中隔穿孔閉鎖術、萎縮性鼻炎手術は医師の異動により行っていません)

4)アレルギー性鼻炎

ダニ/ハウスダストアレルギー、スギ花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎は、近年では日本人の3割以上がかかっていると言われるほど多い疾患です。鼻詰まり、鼻汁、くしゃみなどの症状は辛いものですが、アレルギー自体は体質ですのでなかなか完治させることは困難です。(スギとダニについては、完治可能な舌下減感作療法が開発されましたが、当院では施行していません)アレルギーの症状を抑える方法としては抗ヒスタミン薬に代表される内服治療、点鼻ステロイド薬などの薬物療法がありますが、中断するとまた悪化してしまいます。
アレルギー反応が起きている場所である下鼻甲介をCO2レーザーで焼灼することで、反応が起きにくくなり鼻汁、鼻詰まりを改善できます。鼻の中だけの局所麻酔で行うことができ、費用は3 割負担で約1万円です。効果には個人差があり効果の出づらい方もいます。また、数年ほど経つと効果が薄れてしまいますが、その場合は追加で施行できます。
重症のスギ花粉症(内服や点鼻薬による治療行っても効果がない)に対しては、生物学的製剤による治療が可能になりました。花粉飛散期間中に月一回注射をすることで症状をかなり軽減できます。ご自身で「重症花粉症」について検索の上、当てはまるようでしたらご相談ください。

5)めまい

めまいとは「体がふらふら、ふわふわする」「目の前がくるくるまわっている」ように感じる状態をいいます。
大きく分けて、脳梗塞(小脳梗塞など)をはじめとした中枢性めまい、内耳(三半規管・前庭)が原因である内耳性めまい、それ以外(心因性・頸性のめまいなど)に分類できます。
一般に激しい回転性のめまいは内耳性疾患(メニエル病、前庭神経炎など)によることが多く、きこえの症状(難聴、耳鳴りなど)を伴っている場合は内耳性を疑いますが、脳梗塞などでも起きることがあり症状だけで判断することは困難です。手足の力が入らない、ろれつが回りにくい、頭痛がするなどの症状がある場合は中枢性が強く疑われるため脳外科/神経内科の受診が必要です。
めまいで受診される方の中で一番多い良性発作性頭位めまい症は、起き上がったときや寝返りを打った際に数秒〜数十秒のめまいを感じ、じっとしているとおさまるのが特徴です。このタイプのめまいは、わざとめまいが起きるような体の動きを繰り返しすることでおさまってきます。
めまいの診療は、まず症状を伺い、次に眼振(眼が勝手に動いてしまう現象)を確認します。眼振は内耳性でも中枢性でも見られますが、その動き方のパターンで診断をしていきます。聴こえの状態をチェックする聴力検査、体のバランスの状態を見る重心動揺検査もあわせて行います。(この2つの検査を診察前に行っていただくこともあります)中枢性のめまいは進行性で自然に回復することがなく、早期の治療が重要なため疑わしい場合は脳外科と連携して診療を行います。精密検査を要する場合は、目の動きを電極で拾って細かく記録する電気眼振図検査(ENG:予約制)を行い、中枢/内耳のどこに異常があるかを調べていきます。それでも診断がつかない場合は東京大学医学部附属病院等の専門家にご紹介しています。
起き上がった時にふらついたり目の前が暗くなったりなど、立ちくらみの症状は姿勢の変化に血圧の調節が間に合わない起立性調節障害によることもあり、血圧測定で診断します。偏頭痛に伴うめまい、頚椎の変形によるめまい、うつ病によるものなど様々な疾患でめまいは生じるので、その都度該当する科の医師に相談していきます。

耳鼻咽喉科疾患の病態生理の解明と治療効果に関する後ろ向き研究へのご協力のお願い 令和4年6月23日

1.研究の対象

2006年4月1日から2025年3月1日までに当院耳鼻咽喉科を受診された患者様の診療録に基づくデータを研究の対象としております。

2.研究目的・方法

目的:耳鼻咽喉科疾患に関する診断および治療は多岐にわたり、また年々進化しています。
当院において、耳鼻咽喉科疾患の診断に用いた検査結果や各々の疾患に対する治療成績をまとめ、比較検討することでこれまでの当院における診断法・治療法の有用性、妥当性を検討します。
方法:当院耳鼻咽喉科所属の研究担当者が、対象となる方の診療記録(カルテ)や画像・検査データなどの情報を基に調査・集計します。新たな診療や検査の必要はありません。
研究期間:2025年3月1日まで

3.研究に用いる試料・情報の種類

診断名、年齢、性別、既往歴等診療情報録(カルテ)に記載されている情報、検査データ、X線・CT画像から読み取れる情報、手術情報等

4.お問い合わせ先

本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申し出下さい。
また、試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申し出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。

照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
東京山手メディカルセンター耳鼻咽喉科
住所:東京都新宿区百人町3丁目22−1
電話:03-3364-0251(代表)
担当者:研究責任者金谷佳織(耳鼻咽喉科部長)