呼吸器内科

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*当院、呼吸器内科を初めて受診される患者さんへ

当院は地域医療機関との連携を図る、紹介制を原則としております。
このため初診の場合、緊急の場合を除き、「かかりつけ医」など地域の医療機関からの紹介状をご持参下さい。
紹介状は必ずしも専門医からの文書でなくてもかまいません。

※紹介状持参の方は、初診、再診すべて総合医療相談センター(8番窓口)へ。

当院呼吸器内科の特色-間質性肺炎など

 呼吸器の病気は種類が多く、その中でも最近は診断と治療に工夫が求められる病気が増えています。間質性肺炎、肺癌、非結核性抗酸菌症、その他の難治性感染症などです。
 私達はこれらどの病気に対しても、今の日本で可能な最高水準の医療を提供しようと、診療,学会活動などに励んでいます。
幸いにその姿勢と実績をご評価頂き、多くの方が入院、治療を受け、また退院してゆかれます。その一人一人にどうしたら御期待に応えて良い医療を提供できるか、スタッフ一同常に考え努力しています。
 徳田非常勤医師(元常勤顧問)は、米国ベストドクターズ社(Best Doctors,Inc.:本社・ボストン)から、専門医同士の評価によって選ばれる『Best Doctors in Japan 2016-2017』に、選ばれました。2008年から9年連続での選出となります。

主要疾患と治療法

1.間質性肺炎

【間質性肺炎とは】
 間質性肺炎は、呼吸器の世界では一番重要な病気の一つです。これは単一の病気ではなく、何種類もの病気の総称です。最近は、それらの病気の頻度、比率が大きく変動してきており、既成概念にとらわれない柔軟な対応が求められています。
 間質性肺炎は病気の進み方で 二つに分けられます。日,週の単位で悪くなる急性間質性肺炎と,月,あるいは年の単位でじわじわ進行する慢性間質性肺炎です。
 急性のものとしては,最近多いのが,手入れの不十分な加湿器で内部に繁殖するカビが原因の加湿器肺です。また様々な薬、例えば不整脈の薬、漢方薬などの薬の副作用でおこる薬剤性肺炎も昔から変わらない頻度であります。また,特発性器質化肺炎という病気も頻度,重篤度から言って重要です。
 慢性のものとしては,かつては特発性間質性肺炎(いくつかの病気の総称です,その中では特発性肺線維症が有名です)が多かったのですが,最近はこれらは大きく減少しており、その一方できちんと調べると原因のわかるタイプが増えて来ました。慢性過敏性肺炎と言って,羽毛布団、ダウンジャケット,飼育中の鳥、など羽毛の成分のアレルギーで起こるものが今一番の注目です。その他に住居内のカビ(湿気の多い部屋にはびこるカビや,エアコンの内部に繁殖するカビ)で起こるものもしばしば見られます。
 次に,関節リウマチ,強皮症,皮膚筋炎などの膠原病を基礎に起こってくる膠原病性間質性肺炎もますます重要な病気となって来ています。
また最近、PPFE(胸膜肺実質線維弾性症)という病気がわが国で増えて来ています。これは肺の上の方を中心に線維化が起こり肺が徐々に縮んで来る病気ですが、これは実は単一の病気ではなく、半分位で原因が見つかり、適切な対応をすることで進行を遅らせることが出来ることが判って来ました。詳しくは別項をご覧ください。
 これらは病気毎に,治療法(薬の種類,量,期間),生活上の注意などが異なりますので,このどれであるかの鑑別過程が非常に重要で,専門医の腕の見せ所です。

【間質性肺炎の診断と治療】
 ここでは主に慢性経過の間質性肺炎について述べます。
 間質性肺炎の診断、治療は,これら様々なタイプのうちのどのタイプであるかを診断することから始まります。咳、息切れなどの症状に苦しんでおられる方の場合,通常1週~2週間の入院をお願いしています。そこでくわしく家庭や職場などの環境をおうかがいしつつ、幾つかの検査をいたします。検査はその方の体力やご希望を伺いながら組み立てて行きます。
 診断がつきましたら、それに続けて患者さんの苦しみに対して何が出来るかを考え、それらの症状を改善する治療をして行きます。治療で、病気そのものが(肺機能や画像検査所見で)一定程度改善する方も何割かはおられます。それも含め、入院された方の7割以上の方が、咳、息切れなどの症状が軽くなり、来て良かったと喜んで頂けています。
 一番頻度の多いのが慢性過敏性肺炎です。多くの場合、羽毛製品、加湿器など、原因と目されるものが見つかります。その場合の治療としては、必要な場合、まずは点滴治療で炎症を鎮めますが,その一方,自宅の環境整備と言って,原因と目されるものを徹底的にお住まいの空間から除去して頂くことが重要です。そうするとその後の経過が穏やかで,長期間進行を抑えることも可能です。少量の免疫抑制剤(ステロイドやタクロリムス)を使うこともあります。ステロイドは長期使うと副作用が多いので,極力最小限にしています。
 特発性肺線維症はかつては間質性肺炎の中で一番多い病気でしたが、最近大都市では急速に減少しています。進行そのものを抑えることはなかなか難しく,線維化を抑える抗線維化薬が処方されます。この薬は進行を遅らせることしか出来ませんので,適応をよく見定めてから処方いたします。また副作用があり、消化器系の副作用がその中心です。その対策も工夫しております。中には辛い咳で苦しまれる方もおられます。私たちは,特発性肺線維症であっても咳を抑えることは多くの場合で可能と考え,実践しており、患者さんから喜ばれております。
 膠原病性間質性肺炎は,永年提携してきた東京女子医科大学リウマチ膠原病内科との共同作業を経て,現在は当院の膠原病内科の専門医師(3名)と相談しつつ,膠原病の治療と間質性肺炎の治療とを入院,外来で同時に併診しつつ進めてゆきます。徳田医師はこの病気のことで何度も学会で講演,シンポジストを務めてきた,日本の第一人者です。

【外来での継続治療】
 上記3つのタイプについて、まとめて述べます。外来での治療は,二通りあります。炎症性と考えられる場合は、過剰な免疫を抑える治療が必要ですが、それら薬剤の副作用もあり得ますので、画一的ではなく、その方に適した治療(量、投与期間)を常に考え調整して行きます。一方炎症の関わりが少なく、線維化が主たる原因と考えられる例では、抗線維化薬を処方することもあります。
 間質性肺炎は,治療が長期におよび、また一旦良くなってもその後の再発がありえます。当院では診察の度にきめ細かく状態をチェックしつつ治療を考えており、その結果再発で不慮の転帰をとる方の数を最小限に抑えております。

2.気管支拡張症

 気管支拡張症は,一時減少しあまり注目されなくなった病気ですが,最近わが国だけでなく欧米でも,一転増加の一途を辿っています。原因がはっきりしない特発性気管支拡張症が半分以上を占めます。その症状は様々で,頑固な咳,痰に苦しめられ,日常生活の質が損なわれる方から,繰り返す肺炎に悩む方,だんだんと肺の機能が低下し呼吸機能が低下する方,等,様々です。


【気管支拡張症はなぜ起こるか】
近年欧州を中心にこの病気の病態解明が急速に進んできており,この病気は気管支に定着する細菌に対する過剰免疫と考えられています。治療は,菌を抑えるだけでは不十分で,気管支での強すぎる免疫反応を適切にコントロールしてゆくことが重要となります。

【気管支拡張症の治療】
 この病気については、国内の認識は未だしで、真剣に考え取り組んでいる施設はごく僅かで,つらい症状を訴えても,大した病気ではない,あるいは治療法がない,として治療して貰えない方が多いようです。
 当院では、欧州の最近の研究成果を取り入れ、独自の工夫を加えて、治療しています。軽い場合は外来での抗菌薬(内服)のみでおさまることもありますが,症状が重い場合,入院して頂いた上で,点滴治療によって先ず重い症状を鎮め,その後外来で,その良好な状態を維持する治療を,一人一人の病状に合わせて工夫します。未だ全ての人に当てはまる一般的な治療法が確立できていないのが現状ですが,およそ2/3の方に,当院で治療を受けてある程度~非常に症状が楽になったと喜んで頂けています。

3.肺非結核性抗酸菌症

【非結核性抗酸菌症とは】
 肺非結核性抗酸菌症は中高年女性を中心に最近増え続けており,年間の発生頻度は結核を追い越したと言われます。非結核性抗酸菌とは,抗酸菌のグループのうち、結核菌以外の菌の総称です。それらの菌の一部(主なものだけで5,6種類くらいあります)が人の肺に病気を引き起こし、それらを総称して肺非結核性抗酸菌症と呼びます。その原因の9割はMACと呼ばれる菌で,その場合病名を肺MAC症とも言います。幸いに周囲への感染性はありません(御家族や周りの人にうつす危険はないと言うことです)。

【非結核性抗酸菌症の進行は様々】
 非結核性抗酸菌症の症状は、最初は軽い咳、痰程度ですが、症状がなく健康診断で発見される方も数多くおられます。治療無しで全く進行しない人も少なくない一方、一部の人では進行し、肺がだんだん荒れて行くこともあります。


【非結核性抗酸菌症の治療】
 9割を占めるMAC症について、以下述べます。MAC症では2~3種類の薬の1年以上の服薬が標準と言われますが,実はそのような治療が必要な方は一部です。当院ではご本人の免疫力,体調管理(特に栄養に気をつける,ウォーキングなど身体を動かす)、ストレスによるそれらの乱れを重視しています。この考え方で対応して、僅かな治療のみで10年~20年無事に過ごしている方も少なくありません。とはいえ,要所要所で適切な治療が必要になる事が多いので,診断がついた後,定期的な通院をお願いしています。

4.肺癌

【すみやかな検査】
 肺癌は年々増加しており、大きな問題となっています。各種の癌の中では予後の厳しい病気だけに、病院の力量が問われます。我々は迅速に診断し治療に入ることを最優先に考えており、入院後原則10日以内に必要な検査を済ませます。

【外科治療が必要な場合】
 外科治療が適していると判った方の場合、当院呼吸器外科では早期例について胸腔鏡を使った負担の少ない手術に積極的に取り組んでおり、良い成績を上げていますので、御相談下さい。詳しくは呼吸器外科のページをご覧下さい。

【標準治療ときめ細かい調整】
 それ以外の場合、化学療法、放射線療法、免疫療法,あるいはそれらを組み合わせた治療法を考えて行きます。今や抗がん剤治療には、有効性,安全性の確立した標準的な治療法がいくつもあります。また近年は免疫チェックポイント阻害薬という、免疫を強化して癌と戦う治療法も広まってきました。ただ副作用の懸念もあり,どなたにも,と言う訳には行きません。これらの治療法を組み合わせて,その方に最も適した治療方法をお勧めしております。薬の種類,量については、エビデンス(最新の学問的知見)を大事にしつつ、その方の病状、体力を考え、画一的ではなく、きめ細かい調整を行って行きます。なお,放射線治療,ガンマナイフなどが必要な場合は,近隣の系列病院と協力関係があり,スムースに行っています。

当科の全般的な診療方針

1)最高水準の医療
 特に難治性疾患(間質性肺炎、肺癌など)については、国内最高水準の医療を提供するのが当科の義務と考えています。間質性肺炎は現在、病気の種類、その診断法、治療法などが大きく変わりつつあります。常に最先端の情報を取り入れつつ、その方に合った治療法を考えています。肺癌についても当院は呼吸器外科、放射線科とも常勤医がおり、最高レベルの医療が提供できる体制です(なお、当院の放射線治療装置は現在運用を中止しています。再開できるようになり次第、本HPでお知らせします)。ごく一部の先端医療技術が例外ですが、その場合はそれらの医療を行っている専門施設と連携体制があります。

2)迅速な診断
 重い病気については特に速やかな診断が求められます。当院は、内視鏡、CT、MRIなどの各種画像検査などは、混みあう時期でも融通が利きます(中規模病院の利点です)ので、短期間でで検査、診断が完了します。よく大規模病院で検査まで何日も待つという話を聞きますが、その間にも辛い症状が続き、体力が衰えることも少なくありません。私達は柔軟に対応し、1週間以内の検査完了を目指しています。急いでの入院が必要な場合は、通常即日~一両日以内の入院が可能です。これらも中規模病院ならではの機動性によるものです。

3)患者さんの目線に立った医療
 咳、痰、息切れなどはそれが何日も何週間も続くととても辛いものです。もし自分だったら、あるいは自分の家族だったらどうだろう、といつも考え、診療に当たっています。

4)一丸となったチーム医療
 週2回、全入院患者さんについてのカンファレンスを行い、緊密なチームワークで診療しています。

更新日:2024/04/30