HPV(ヒトパピローマウイルス)検査について
HPV(ヒトパピローマウイルス)検査について
東京山手メディカルセンター:産婦人科
・ヒトパピローマウイルス(HPV)はパピローマ(乳頭腫)を形成する一連の小型DNAウイルスのことをいいます。 現在では、ウイルスによる癌化(ウイルス発癌)の原因ウイルスの1つとして広く知られるようになりました。皮膚癌の一部や子宮頚癌の原因ウイルスとしてだけでなく、口腔癌、咽喉頭癌、外陰癌、膣癌、肛門癌、陰茎癌の発生にも関わりがあることが報告されています。 2008年には、zur HausenがHPVと子宮頚癌の関連を解明した功績によりノーベル医学生理学賞を受賞しています。 ・これまでの多くの研究から、子宮頸部の扁平上皮癌のほとんど(93~100%)からHPV-DNAが検出され、高度異型上皮や上皮内癌の85~100%にHPVが検出されることが明らかになっており、ごく一部の例外を除き子宮頸部の扁平上皮癌はHPV感染を契機として起こると考えられています。 |
・HPVは現在まで100種類以上が知られており、大別すると皮膚に感染するもの(皮膚型)と、性器・粘膜に感染するもの(粘膜・性器型)に分けられます。女性生殖器関連のHPVは粘膜・性器型に属し、40種類前後が存在すると言われています。 【癌との関連の深さを基に分類】 ・これらのHPVを癌との関連の深さを基に分類したものが、ハイリスク型HPVとローリスク型HPVの分類法です。 代表的には、良性腫瘍である尖圭コンジローマから分類されるHPV6や11などがローリスク型に、子宮頚癌から分離されるHPV16や18などが癌に関連が深いハイリスク型に分類されます。ハイリスク型HPVに分類されるものはHPV16、18のほか31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68などが含まれています。 |
・HPVは原則的に性交渉で感染しますが、HPV感染は性交渉のある女性にとっては、非常にありふれたもので性交経験のある女性の約80%は一生に一度はハイリスク型HPVに感染するといわれています。したがってハイリスク型HPVに感染した方がすべて癌になるわけではなく、多くは不顕性感染のまま免疫によって排除されると考えられています。 ・ 一部の症例では感染が消失せずに存続し、さらにそのうちの一部が感染が存続したまま癌にまで進展すると考えられています。 |
・子宮頚癌検診(子宮頸部細胞診)では、これまで癌や前癌病変である異形成の診断を中心に行われてきましたが、最近ではHPVが子宮頚癌の原因であるという概念から、HPV感染の有無を捉えることも重要視する方向に変化しつつあります。 ・ 当院ではこのたび細胞診で、異形成以上の病像が認められる方やHPV感染が疑われる方を主な対象として、ご希望の方に対してHPVテストを行うことにいたしました。 |
【HPVテストの2つの手法】 HPVテストには大きく分けるとハイリスク型HPV感染の有無を検出するハイブリッドキャプチャー法とHPVのタイプを個別に検出できるPCR法に分けられます。 前者は、子宮頚部細胞診においてベセスダシステム導入でASC-US(意義不明な異型扁平上皮細胞)と診断された場合、保険適応で行うことができます。 ハイリスク型HPV13種類(16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68型)を検出することができ、感染しているかいないかがわかりますが、これらのうちどの型のHPVに感染しているのかはわかりません。 一方、後者のPCR法では、検出されたHPVのタイプを、前述のように16、18などの数字で表します。高感度ですが、比較的高価な検査となります。最近になってこちらの検査も、あらかじめ行われたコルポスコピーによる狙い組織診断の結果、CIN1またはCIN2と判定された方には1イベントあたり1回に限り保険適応となりました。この検査では、ローリスク・ハイリスクを含めた26種類のHPVの型判定が可能です。 【PCR法の特徴】 ハイリスク型HPV陽性の異形成は、それらが陰性のものに比べて自然治癒しにくいという報告があり、また16、18型は他のハイリスク型に比べ早期に高度異型上皮・上皮内癌や浸潤癌に進展するという報告もあります。一方で、異形成が自然治癒していくときは、治癒に先立ってHPVが陰性化するともいわれています。またHPVのタイプがわかることで、ワクチンを接種した場合の有用性をある程度予想できると考えられています。ただし、16、18型以外のHPVタイプの悪性度についての個別の評価はまだ不十分であり、またハイリスクとされているタイプの中にもハイリスク(癌を誘発する)というコンセンサスが十分に得られていないものもあり、HPVタイプが判明した場合でも、将来の危険度をどれほど正確に予測できるかについては、まだ不確定要素が多いといえます。 |
・HPVテストは、これまでの子宮頚癌検診(子宮頸部細胞診)に取って代わるものではなく、両者を上手に併用し、またご希望により、その意義や有用性について十分にご理解いただいた上でHPVワクチンも考慮していくことにより、進行子宮頚癌の発生をかなり防ぐことができるのではないかと期待されています。 ・現在採用されているHPV型判定検査の暫定的な運用フローチャートを下に示します。あくまで暫定的なもので、今後適宜見直しが行われることをご理解ください。 ![]() |