脊椎脊髄外科

診療・各部門

当院は地域医療機関との連携を図る、紹介制を原則としております。
このため初診の場合、緊急の場合を除き、「かかりつけ医」など地域の医療機関からの紹介状をご持参下さい。
紹介状は必ずしも専門医からの文書でなくてもかまいません

また、脊椎脊髄外科は完全予約制となっております。
恐れ入りますが、ご理解の程よろしくお願いします。

※紹介状持参の方は、初診、再診すべて総合医療相談センター(8番窓口)へ。

脊椎脊髄外科の特色 [脊椎脊髄外科専門外来]

脊椎脊髄外科では、日常よく見られる腰痛、肩こり、頸部痛などを初めとして、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎辷り症、頸椎症性脊髄症、脊髄腫瘍などの疾患の手術も行っています。 MRIの進歩と共に最近の脊椎脊髄外科の進歩は目覚ましいものがあります。20年前までは治療が不可能であったり、治療成績が芳しくなかった疾患もかなり良い成績で治療することができるようになりました。

当院の脊椎脊髄外科では常に最先端の医療技術を世界中から導入し、患者さんに満足していただけるように日々努力しています。また他院で治療し、改善が芳しくない場合でもご相談に乗ります。脊椎の疾患で悩んでいらっしゃる方はぜひご相談して下さい。

脊椎脊髄外科の診療方針

  1. 【患者さん中心の医療】
    治療方針は患者さんと十分検討し、それぞれに合った最適な方針で治療致します。
  2. 【最先端の治療】
    常に新しい医療の知識と技術を導入して治療に当たります。
  3. 【安全な医療】
    脊椎の手術は危険であると言われていますが、安全で改善の得られる方法で治療に当たります。

脊椎脊髄外科の主要疾患と診療

主要疾患1.腰椎椎間板ヘルニア
■内視鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術

腰椎椎間板ヘルニアは外来での保存的治療を治療の原則としています。
安静、消炎鎮痛剤の内服、ダーメンコルセットの装着、神経ブロックでほとんどの腰椎椎間板ヘルニアは軽快します。
しかし、大きい椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が合併して、保存的治療で改善しない場合には手術治療が必要となります。
当院では、1椎間で、片側の場合には原則として内視鏡下手術で行っています。
内視鏡下手術は従来の手術に比較して侵襲性や術後の痛みが少なく、術後一日から二日目で歩行が可能になります。
よって入院期間は術後1?2週間位です。手術成績も良好で、特別な重労働以外を除いて、術前への仕事復帰は可能です。

主要疾患2.腰部脊柱管狭窄症
腰椎椎間板ヘルニアと同様に外来での保存的治療を治療の原則としています。安静、消炎鎮痛剤の内服、ダーメンコルセットの装着、神経ブロックでほとんどの患者さんは軽快します。しかし、坐骨神経痛がかなり強く、日常生活が不自由な場合には手術療が必要です。
手術方法は、狭窄の程度や範囲によりますが、開窓術、椎弓切除術です。術後経過は良好で、術後二日目で歩行が可能になります。よって入院期間は術後1?2週間位です。
手術成績も良好で、術前の坐骨神経痛はほどんど軽快します。しかし、しびれに関しては改善はするものの軽度残存することもあります。

主要疾患3.腰椎辷り症(ようついすべりしょう)
■PLIF(腰椎後方進入椎体間固定術)

腰椎辷り症とは、腰の骨がずれて、神経が圧迫されるため坐骨神経痛やしびれが出現する疾患です。軽度の場合には無症状ですが、進行すると腰痛、神経痛、筋 力低下などが出現し、歩行困難になります。治療方法は症状の程度によりますが、10分以上歩行可能である軽度の場合には消炎鎮痛剤の内服、ダーメンコル セットの装着、神経ブロックなどの保存的治療を行います。歩行が5分以内、起立困難な場合には手術治療が必要です。
辷り症があり、不安定性が強い場合にはPLIF(後方進入椎体間固定術)を行っています。この方法はずれている骨を軽度戻して固定する方法です。
手術時間は手術範囲によりますが、約3時間位で、入院期間は術後2から3週間です。
神経の通り道を確保し、固定するため痛みは軽快し、歩行能力はかなり改善します。
最近の脊椎インストゥルメンテーション手術の進歩はすばらしいものがあります。この方法は固定した上下の腰骨が再びずれることがあると言われています。
しかし、腰椎辷り症はその原因をよく検討し、生活スタイルの変更や腰の周囲の筋力増加によってかなり再発を予防でき、良い術後成績を長期に維持することができます。

主要疾患4.頸椎症性脊髄症
■棘突起縦割法頸椎脊柱管拡大術

術前ミエロCT
術前ミエロCT
術後CT

術後CT

脊髄は、脊柱管という背骨のトンネルの中を通っています。
この脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて麻痺が出現するのが、頸椎症性脊髄症です。 軽度の場合には姿勢の注意、頸椎カラーの装着などの保存的治療で軽快します。しかし、箸が使えない、ペットボトルのふたが開けられない、
階段の昇り降りに手すりが必要などの麻痺が出現した場合には手術が必要です。このような四肢の麻痺が強い場合には棘突起縦割法頸椎脊柱管拡大術を実施しています。この手術方法は日本で開発されてから25年以上経過し、多くの病院で行なわれている方法であり、現在欧米でも行なわれるようになっています。
当院ではできるだけ筋肉や頸椎可動機能を温存して、狭い脊柱管だけを拡大するように心がけています。
また術後の頸椎周囲の筋力強化も指導して頚部痛の予防に努めています。
入院期間は術後2から3週間で、デスクワークなどの軽労働は術後約1ヵ月位で職場復帰が可能です。

主要疾患5.脊椎圧迫骨折、遅発性神経麻痺
■保存的治療

初診時 歩行困難

保存的治療9ヵ月後 T字杖歩行可能

近年高齢化とともに骨粗鬆症の患者数は増加傾向にあります。
その中で脊椎圧迫骨折は大腿骨頸部骨折と同様に患者さんのADLに強く影響し、QOLを低下させます。
特に高齢者で麻痺を伴った場合は、車椅子になることもしばしばあります。 脊椎圧迫骨折は一般的に2?3週間の安静臥床で軽快し、通常の生活に復帰可能です。
しかし、骨粗鬆症性椎体圧迫骨折で遅発性に麻痺が出現するケースがあることがわかり、MRI等の画像の進歩によりその診断も容易になってきました。
また多くの報告により、その病態、診断、治療方法も散見されるようになってきましたが、その病態の根本的なメカニズムは十分解明されていません。
また治療方法に関しても手術治療が主体で、保存的治療はほとんど実施されず、その方法や効果の報告も少ないのが現状です。
しかし、実際にはご高齢であるため全身状態が芳しくなく、手術治療がハイリスクであるため本人またはご家族が手術を望まない場合も多くあります。
当院では、積極的で十分な保存的治療を実施して症状がかなり改善した症例を経験しています。
もちろん、麻痺が完全になり、保存的治療で効果がない場合には手術治療を実施しています。

■手術治療
実際に手術を行った患者さんがいますので、ご紹介させていただきます。患者さんは85歳女性で、もともと元気に歩かれていましたが、転倒をきっかけに腰痛・両足の痛み・下肢麻痺が出現し、車椅子レベルになったため入院となりました。入院後、コルセットや強い痛み止め、注射などを行いましたが、症状の改善がみられなかったため手術を行いました。術後、約1ヶ月で杖歩行にて退院となりました。このように、保存加療を十分に行っても症状の改善が認められない場合は手術療法(後方進入椎体再建術)を行うことがあります。今回、85歳と高齢でありましたが、内科や麻酔科等と協力して安全に手術を行うことができました。

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主要疾患6.透析性脊椎症 / 破壊性脊椎関節症(DSA)

破壊性脊椎関節症は、透析で除去できないアミロイドの沈着により、骨・軟骨破壊が引き起こされる透析患者さんに特有の進行性の破壊性病変です。透析歴が10年を超えると徐々に発症頻度が増大し、20年以上になると約60%に認めるとされています。通常の経年性変化とは異なり、椎体間の異常な動き(不安定性)や椎体の変形などが非常に短期間に強く生じる特徴があります。本疾患では適切な時期に確実な脊椎の安定性を得ることが重要であり、透析患者さんに保存療法が無効の腰痛、下肢痛、歩行障害が生じた場合には早期の受診をお勧めしております。
手術では罹患部位の確実な安定化を得ることで症状の改善が期待されますが、骨強度低下や骨質低下が見られる透析患者さんの脊椎で安定性を得ることは難しく、一般的にはよい手術成績が得られないとされています。当院では、PLIF(後方進入椎体間固定術)にPLF(後側方固定術)を併用し、また椎体間に人工骨を使用するなど、透析特有の骨脆弱性に配慮しつつ、早期に骨癒合を得る工夫を加えて治療にあたって良好な成績を得ております。

術前MRI

術前MRI
jutugotanjun2015.7.27

術後単純X線画像
(腰椎後方進入椎体間固定術と後側方固定術の併用)

これらの疾患以外に胸椎疾患、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、炎症性疾患、 腫瘍等ほとんどの脊椎、脊髄疾患を扱っています。脊椎、脊髄疾患でお困りの方はぜひご相談して下さい。

2022年08月04日更新